船 は 美 しい 。

人と物を運ぶ為に作られた水に浮ぶ容れ物 。

その船の美しさは、古い時代から先人が追求してきた機能の結晶に他なりません。
人はその考え得る限りを尽して、その機能と造型に工夫を重ねてきました。
「およそ人のなし得た造作物で、船ほど美しい構造物はない。」という。
これは帆船に贈られたオマージュですが、帆船時代以後の近代にも、あてはまります。
人が機械を手にした以後の船、ことに客船造型の美しさは、船の機能と人の美意識が 全き調和した姿形の結果と、私には見えるのです。

数々の名船を設計した和辻春樹氏は、その名著随筆「船」の中でこう述べています。
「船の外観に現れている線、それが直線であろうが曲線であろうが、いかに相錯綜していようが、そこには寸分の無駄なものはないはずであるから、色彩美をほとんど持たない線の集合だけで、船は新興芸術の尖端をゆく美しさを表現している。」

自己を主張する雄大な煙突と、帆船時代の名残りのマストをその前後に配し、装備した機関と連動する大小さまざまの機械部品を上甲板に林立させた、合目的の集約された形態、近づいて見る時に表われる鉄板の連なる合せ目、そこに打たれた無数のリベットまでもが点描となって迫ってくる。
船は人間の歴史と共に今日まで進化を続けています。

今日の文明社会との係わりにおいて考えるとき、私は船の時代を大きく二つに分けたいと思います。
15〜16世紀の大航海時代から19世紀まで続いた木造帆船時代、その後に起こる機械文明がもたらした鉄甲推進機関の船。
「客船」という概念はその過渡期に発生したものと考えます。 今日まで約150年に渡る客船の変遷歴史があります。
その史上、燦然と光芒を放ち、やがて水平線の彼方へ過ぎていった、短くも華やかな時代が展開しました。それをオーシャン・ライナーの黄金時代と呼びます。

主な舞台は北大西洋、時代の背景として西欧主要国の植民地経営に要する物資と人員の移送、ヨーロッパ大陸の人口増加と飢きん、新大陸アメリカによる大量移民の受入等が要因となりました。
埠頭では連日のように出航ドラが鳴り響き、激しく飛び交うテープの中で手を振り合う群集と乗客、そこに楽隊の演奏が加わり、喧騒となってあたりを包み込む。
築いたものを現金に換え、身の回りの品物だけをトランクに詰め、希望と不安の交ざりあった顔がデッキに重なり合う。
この時、彼らの高揚感が最高潮に達するのです。
他方では、この情景とは全く異質の社交世界が絵画的に展開される。
中世の装飾様式に囲まれた豪華な空間に身を置いて談笑する紳士と淑女。
異なる次元に住む人々がそこに収容され、各々の人生に決して忘れることのない鮮やかな印象を焼き付けながら波の上を進んで行く。
その絵や写真を目にするとき、それらが重なり合う一つのイメージとなって私を魅了します。
日本においては、時代背景も条件も異にしますが、西欧先進国に負けじと努力を積み重ねた船会社とその客船達によって独自の客船文化の華を咲かせた時代がありました。
新しく客船が誕生すると、その素晴らしさを伝える手段として各種の媒体が登場します。
代表的なものとしては、船会社や代理店の店頭を飾る精巧な模型、ポスター、ブロシュア、記念品、パンフレット、販促小物類などです。
今日、それらの品物は欧米のオークションやディーラーを介して盛んに取引きされています。

当館では、それらの品々を、帆船時代から、各分野にカテゴリーを分類して展示を 構成しております。
御来館の上、ゆっくり御覧いただければ幸甚に存じます。

館長

 追記
申し訳ございません。
大半の部屋、及びコーナーが未だ工事中です。
随時オープンし、別館にはミュージアム・ショップを設置の予定です。
再訪のほど、お待ちしております。

(尚、展示品は、特に注釈のあるものを除きすべて当館のコレクションで構成しています。)



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